2024.02.19

eスポーツ大会における『賞品』と法律
eスポーツ専門放課後等デイサービスTJ-es

こんにちは。札幌eスポーツ専門放課後等デイサービス「TJ-es」です。
eスポーツ専門放課後等デイサービス TJ-esは、13歳〜18歳(中高生)の世代が、eスポーツを通して将来必要な働き方・働くスキルを学べる場所です。

eスポーツは日本で盛り上がっていない

そう揶揄されることも少なくはありませんし、一部は事実です。

ではなぜ盛り上がっていないのか?
それは他国と比べて非常に賞金が少ないことが理由の一つです。

「なぜ日本では賞金が少ないのか」「賞金の多い大会を開けばいいじゃん」
という声が聞こえてきそうですが、これには日本の法律が絡んでいます。

法律を知らずに賞金のある大会を開くと犯罪になる可能性もありますので、
イベントの企画や運営に興味のある方は、ぜひ本記事を参考にしてください。

なお、本記事の筆者は弁護士資格など持っていない素人ですので、その点はご了承ください。

1. 刑法 賭博罪(刑法185条)の該当可能性

まず、eスポーツの賞金制大会において賭博罪の適用可能性が問題になります。
ポイントとなるのは、以下の3点です。

①偶然の要素に左右されること
②財物・財産上の利益についてのものであること
③獲得・喪失を参加者同士で争うこと

判例上、囲碁や将棋といった競技においても一見偶然が入り込みにくいように見えますが、偶然性が認められています。
したがって、eスポーツは原則として①を満たすといえ、多くの賞金制大会では②も満たすことになるでしょう。
つまり、重要となるのは③獲得・喪失を参加者同士で争うこととなります。

参加者間において、財物等の獲得と喪失の相互関係がある場合には当該要件に該当してしまいます。
例えば、参加者から参加費を徴収し、参加費を大会勝者に分配する場合には、敗者と勝者に財物の獲得・喪失関係が生まれてしまいます。

一方で、第三者が賞金を準備する場合には財物の獲得・喪失関係は生まれませんので、賭博罪は成立しません。
例えば、スポンサーが賞金を準備する場合や、参加者と観戦者を明確に区別し、参加者からは費用を徴収せず、観戦者に対してのみ入場料を徴収する形の場合であれば賭博罪が成立しないと考えられます。

2. 景品表示法の該当可能性

(1) 景品類の該当性

賞金制のeスポーツは、ゲームという「特定の行為の優劣」によって賞金を得る者を決定します。
この賞金が、景品表示法にいう「景品類」に該当する場合、賞金制のeスポーツは、公正取引委員会のいわゆる「懸賞制限告示」に定める「懸賞」に該当することになり、賞金の最高額は、

①懸賞にかかる取引の価額の20倍
②①の金額が10万円を超える場合は、10万円を超えてはならない

という規制を受けます。

たとえば、仮に景品表示法の適用がある場合には、販売価格が5000円を超えるゲームソフトの販売に、景品の上限額は10万円と定められることとなります。
そこで、賞金が「景品類」に該当するかどうかが問題となります。

景品表示法における「景品類」(景品表示法第2条3項)とは、以下のものを指します。

①顧客を誘引するための手段として
②事業者が自己の供給する商品又は役務の取引に付随して相手方に提供する
③物品、金銭などの経済上の利益

プレイするたびに料金がかかるアーケードゲーム、プレイするために購入が必要なコンシューマーゲームやPCゲーム、課金することにより有利となるタイプの課金制のゲームは、ゲーム会社が賞金を提供する場合、

①顧客を誘引するための手段 
②取引に付随して提供されるもの

この要件に該当してしまうと解されます。
したがって、現在市場に出回っているゲームの多くは、ゲーム会社が賞金提供を行う場合には、その賞金は「景品類」に該当してしまうと解されます。この場合、賞金額の上限は、10万円を上限として、ゲームの販売価格の20倍までということになります。

一方で、第三者が賞金を準備する場合には
「事業者が自己の供給する商品に付随して相手方に賞金を提供する行為」とは言えないため、景品表示法の規制を受けないと解されます。
ゲームセンターが賞金を準備する場合などが考えられますが、後述する風営法による規制が問題となってしまいます。

(2) 役務の提供

一方で、取引の相手方に提供する経済上の利益であっても、仕事の報酬等と認められる金品の提供は、景品類の提供にあたらない、とされています。
したがって、「仕事の報酬等」として解釈できる賞金の提供については、景品表示法の規制を受けません。(プロ野球選手などプロライセンスがあるもの)

3. 風営法の該当可能性

eスポーツの大会は、風営法上のいわゆるゲームセンター営業に該当し、風営法上の規制が及ぶ可能性があります(風営法2条5号)。

風営法上ゲームセンター営業にあたるものは、以下の場合です。

①スロットマシン、テレビゲーム機その他の遊戯設備で本来の用途以外の用途として射幸心をそそる恐れのある遊戯に用いることができるものを備える
②店舗その他これに類する区画された施設において
③当該遊戯設備により客に遊戯をさせる営業にあたる場合

そして、風営法上のゲームセンター営業に該当する場合には、管轄の都道府県公安委員会に許可を受ける必要があるほか、その営業に関し、遊戯の結果に応じて賞品を提供してはならない(同23条2項)、とされています。
そのため、ゲームセンター営業において、ゲームセンター側が主体となって賞金制の大会を行うことは原則として「遊戯の結果に応じて賞品を提供する」ことになり認められません。

なお、イベント会場などにおいて賞金制の大会を行うことについては、未だ議論が固まっていません。

4. おわりに


風営法上のゲームセンター営業にあたらない場合において、適法に開催できる賞金制大会として例えば以下の大会形式が考えられます。(筆者私見)

①主催者がゲーム会社とは別であり、スポンサーが賞金を拠出する大会
②主催者がゲーム会社とは別であり、参加料を取らず観戦料で賞金を拠出する大会
③出場者を限定する等により、仕事の報酬として賞金を拠出する大会(但し報酬と認められる金額に限る)


未だ法的議論は継続していますが、eスポーツの発展のためには、早急に各法律上の解釈の統一、解釈基準の公表が行われることが不可欠といえるでしょう。

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